ワインを熟成させる、ワインセラー選び

ワインセラーを手に入れたら、自宅でワインの熟成を楽しみたいと考える愛好家は多いだろう。単なる保管庫としてだけでなく、ワインの味わいを深め、複雑な香りと風味を引き出す「熟成」と言う現象にとってワインセラーは欠かせない存在である。
しかし、すべてのワインセラーが熟成に適しているわけではない。温度管理、湿度管理、振動対策など、長期熟成には欠かせない要素を満たすセラー選びが重要だ。
今回は、そんな熟成を楽しむためのワインセラー選びについて、必ず押さえておきたいポイントを紹介していく。
ワインをおいしく熟成させる保存方法
結論から言って、ワインの熟成には、生産者のカーヴ(ワイン熟成庫)のような環境が理想的である。ここは年中通して薄暗くひんやりとしていて、適度な温度・湿度に保たれており振動も少ない。
上記を踏まえつつ、ワインをおいしく熟成させるための6つのポイントをこの章では押さえていく。
- 直射日光に当たらないか
光、特に紫外線はワインの大敵だ。タンニンや色素を分解し、味や見た目を劣化させてしまう。ワインボトルが茶色や緑色なのも、直接光がワインに当たらないための工夫であるため、必ず暗所で保管することが鉄則だ。
- 振動しないか
瓶内で静かに熟成しているワインにとって、不要な振動は熟成を妨げる原因の一つとなる。よほど家内で振動がある場所があれば避けた方が良いが、キッチンやリビングなどの一般的な設置場所の場合はさほど気にする必要はない。
もし万全を期す場合、耐震マットなども併用するとより安心だろう。
- 異臭がないか
瓶臭いの分子はコルクを透過するとされている。芳香剤、防虫剤、食品などの匂いが強い場所は避けておこう。
- 一定に14度前後の温度を維持できるか
ワインの理想的な保管温度は12℃〜15℃とされ、急激な温度変化はワインの大敵である。
※1温度タイプは構造上、庫内の温度のバラつきが少なく温度変化が安定しているため、長期熟成向きのワインをお持ちの方にお勧めです。
ただし、ワインの温度変化に対する反応は空気よりもはるかに緩やかで、およそ4倍の時間をかけてじわじわと影響を受けると言われている。
すぐに品質が損なわれるわけではないので、急な温度変化にさらされても慌てず安定した温度の場所へ移動しよう。
- 湿度が70%前後か
湿度が低すぎるとコルクが乾燥して収縮し、酸化や液漏れの原因になるため、湿度70%前後での保管が求められる。ただし、この湿度管理はコルク栓のワインに特化した配慮であり、近年増加傾向にあるスクリューキャップ式のワインでは湿度はさほど気にする必要がない。
しかし、高級ヴィンテージワインの多くは依然としてコルク栓を採用しており、適切な湿度は長期熟成に欠かせない要素となる。適度な湿度はコルクを通した微量な酸素の出入りを制御し、理想的なコルク・熟成環境を維持するために必要なため、ワインの熟成において意識しておきたいポイントの一つだ。
- ボトルを横に寝かせて保管する
ワインを長期間保存する場合はボトルを横向きに寝かせた保管方法が求められる。これは、コルクが常に湿った状態を保つことで乾燥による収縮を防ぎ、酸素の侵入や液漏れを防ぐのが目的だ。
また先述した通り、スクリューキャップ式のボトルにおいては気にする必要はない。

ワインの熟成を考えている方にチェックポイントをご紹介
前述した保存方法ができるワインセラーを選ぶことが、熟成ワインを楽しむための第一歩となる。そこで、上記に加えて特に注目したいのが「扉の種類」。
紫外線による影響を考慮すると、ガラス扉よりも鋼板扉タイプがおすすめ。見た目はシンプルだが、遮光性・断熱性に優れ、庫内の環境が外気の影響を受けにくいためである。
ガラス扉タイプもUVカット加工が施されているものがほとんどだが、電気代というコスト面を考慮すると鋼板扉タイプの方が費用を抑えられる。
では次に、こうした扉のタイプに加え、以下3つのポイントも併せて押さえておこう。
収納本数
熟成用のワインセラーを選ぶ際、最も重要なのが収納本数の決め方である。最も一般的なのは、長期保管用本数と短期間で飲む本数を分けて考える方法である。
長期熟成を考えているワインの本数は、5年物、10年物など、何年熟成させたいかによって異なる。一般的に、長期熟成に向いているワインは以下のような特徴をもつため、ぜひ参考にしながら庫内の配置を考えていただきたい。
長期熟成向きワイン(10年以上)
- ボルドーのグランヴァン
- ブルゴーニュのプルミエクリュ、グランクリュ
- イタリアのバローロ、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ
中期熟成向きワイン(5〜10年)
- スペイン・リオハのテンプラニーリョ
- カリフォルニアのカベルネ・ソーヴィニヨン
- 高価格帯のボルドーブランやブルゴーニュブラン
短期間で飲むワインは、リリース時が飲み頃であるように造られているものが多い。概ね3,000円以下の手頃なワインは、買って1〜2年のうちに飲み切る方がベターである。
収納本数を決める際は、現時点での保管希望本数だけでなく、将来の購入予定も考慮に入れること。お気に入りのワインとの出会いは意外に多いものなので、想定よりも多くのボトルを収納できる製品を選ぶことをおすすめする。
冷却方式
ワインを熟成させるうえで最も重要と言っても過言ではない「冷却方式」。代表的なものにコンプレッサー式とペルチェ式の2タイプがあるが、結論から言えば、長期熟成に向いているのはコンプレッサー式である。

インバーターコンプレッサーを採用した省エネ・静音モデルを販売中
コンプレッサー式は冷却力が高く、外気温の影響を受けにくいため、14℃前後の安定した環境を一年中キープできる。さらに、湿度を維持する構造により、コルクに最適な湿度(約70%)でワインを保存できる点も大きなメリットだ。
一方、ペルチェ式は静音性に優れるが、湿度調整が難しく、夏場など外気温が高い時期においては冷却力が不足する場合がある。よって、熟成を見越した長期保存には、コンプレッサー式一択である。
設置場所
ワインセラーの性能を活かすためには、「どこに置くか」も重要なポイントだ。日が直接差し込まない北向きの壁際や、風通しの良い室内が推奨される。一方でキッチンの水回りやベランダ近くなど、気温や湿度、水気の多い場所は避けた方が良い。
また、設置場所とプラスαで放熱スペースの確保も重要だ。ワインセラーの上面、背面、左右には放熱のための一定のスペースが必要となるため、メーカーの設置基準に従って配置を行い、冷却効率を保ちつつ、電気代の節約にもつなげていただきたい。
特に熟成を目的とする場合は、直射日光・高温・振動など外部環境からの影響を極力避けることが求められる。
その中でも、紫外線に関しては、扉の素材や構造が重要だ。例えば、フォルスターのセラーには、UVカットガラス扉や鋼板扉のモデルがあり、いずれも紫外線や温度変化からワインを守るための工夫が施されているため安心である。
フォルスターでおすすめのワインセラー
ワインの熟成を本格的に始めたい方におすすめしたいのが、フォルスター「ST-409FG2(WK)」。
最大120本収納可能な大型モデルで、安定した温度・湿度管理ができるため、長期熟成にぴったりの1台だ。
冷却にはインバーターコンプレッサー式を採用し、季節や負荷に応じて冷却力を調整。さらに加温ヒーターも内蔵されており、冬場の温度低下も防いでくれる。湿度を保つ設計や防振・遮光性の高い構造も魅力で、熟成環境としての安心感が段違い。
デザインはワインセラーでは珍しい観音開きタイプ。中は暖色系LEDが照らし、可変式ラックで収納やディスプレイも自由自在。最下段には日本酒など大きめのボトルも立てて収納できる。
「たくさん入って、安心して熟成できて、見た目も美しい」。そんなワインセラーを探している方に、自信をもっておすすめできる1台だ。
自宅でワインの熟成も楽しめる、ワインセラーを
自宅でワインの熟成を楽しむためには、適切なワインセラー選びが不可欠である。安定した温度と湿度、光や振動を防ぐ設計、そして将来を見据えた収納力。
どれか一つでも欠けてしまえば、せっかくのワインも本領を発揮できないかもしれない。長く、丁寧にワインと付き合っていきたいならば、“熟成を見据えたセラー選び”を、今日からはじめてみてはいかがだろうか。

ライター紹介

田中 純平 (Junpei Tanaka)
J.S.A認定SAKE DIPLOMA
WSET Level3
大学時代のスペイン留学中にワインの魅力に囚われ、帰国後はスペイン語とワインの二足の草鞋を決意。在学中にヴィノスやまざきでインターンを経験し、同年にワイン関連の資格を諸々取得する。卒業後はフリーランスとして独立し、スペイン語レッスンや(株)楽天グループの翻訳担当を経て人気ソムリエが監修を務めるお酒のウェブメディアや西日本新聞社運営の焼酎メディアにて監修ライターを務める。現在は副業にて、ワインD2C会社であるHomewineに携わり、ワインに関する相談にお答えするソムリエコンシェルジュサービスを担当中。